※英生さんが有栖川さんに酷いコトします。
苦手な方は回れ右!!





一瞬で堕ちる。



これは俺じゃないと言い聞かせ、

これは俺だと誇らしげに笑う。



お前が好きだから壊してやりたいし、

壊したいからお前が好きなんだ。








身体と言葉は正反対で、

でも心とは共通している。





―――愛してるよ、アリス。












夜になると寒さは一向に増し、空には無数の星が散りばめられていた。
居酒屋を出た2人は、夜道を横に並んで歩く。


「アリス、俺ん家で飲み直そう。」
「ええな。俺も飲み足りないと思ってたとこやったんや。」


途中、コンビニで酒やつまみを買って火村の下宿へ向かう。
アリスは機嫌が直ったのか、それとも酒に酔ったのか、始終嬉しそうに鼻歌を歌った。



火村は、ただその音を黙って聞いていた。







全てが僕の手によって壊れる







床の上には、大量の缶ビールが転がっている。
火村は机の上の空き缶を片付け始めた。
ふと隣を見ると、アリスが気持ちよさそうに寝そべっている。


「おい、アリス。」
「んー?」
「アリス。アリス。」


肩を揺さぶり起こそうとするが、まだアリスは半分夢の中だ。


「何やねん。」
「風邪引くぞ。布団敷いてやったから、そっちで寝ろ。」
「あー、うん。」
「ほら、起きろ。」


火村が無理矢理立たせようとすると、上半身を起こしたところでジッと見つめられた。
視線を感じ、思わず苦笑してしまう。


「何だよ。」
「火村が女やったら良かったのにな。」
「はあ?何言ってんだよ。」
「火村が女だったら、俺アプローチしてたな。君優しいし、多分女でも美人になれたで。」
「ありがとよ。ほら、世辞は良いから。」


火村は眉をひそめ、顔を逸らした。
グイグイとアリスの肩を引っ張る。


「お世辞ちゃうわ。あーあ、火村が女だったら恋人にしたのに。」


アリスの言葉に、火村は手を止めた。





“女だったら”?


つまり、今のままではどうする事も出来ない。




―――嗚呼、やっぱりお前は俺を受け入れてくれないんだ。



なんて、

なんて、

残酷な響き。



なんて、

なんて、

惨い言葉。



絶望が身体中を渦巻き、一条の光すら閉ざされる。

お前を愛してる俺自身すら否定されたようで、腹立たしくなった。




―――獣に堕ちるには、一瞬あれば十分だった。




「なんてな・・・火村?」


火村はアリスの肩に両手を置き、乱暴に押し倒した。


「うわっ。」
「お前が悪いんだからな。」


そう言うとアリスの上に跨り、無理矢理アリスの両手を上に上げて片手で押さえた。
火村は嬉しそうに、シャツのボタンを外し始める。

アリスは、何故火村がこんな行動を取っているのか分からず、パニックに陥っている。
酔いは、とうに冷めていた。


「えっ?ちょっ、ちょっと火村。」


首筋から鎖骨を指の腹で丁寧になぞられ、アリスは今までにないほどの危機感を覚えた。
必死で抵抗しても、体格差とアルコールのせいで動けない。


「痛っ・・・。」


突然、鎖骨を噛まれた。
見ると、くっきりと赤い歯形が残っている。



何をしているんだ?
一体何があった?
状況が飲み込めないアリスは、ただ火村に縋るしかない。


「火村?火村、止め」
「止めない。」


シャツのボタンは次々と外され、上半身が全部はだけた。
火村は、楽しそうにアリスの肌を撫でていく。
ゆっくりとアリスを愛おしむ仕草に、アリスは怯え混乱する。


「阿呆。冗談キツいぞ自分。」


火村はアリスを見て鼻で笑うと、露わになった白い肌に紅い痕を付けていく。
ちゅっ、ちゅっ、と短いキスの音が脳内に響いた。


「止め・・・止めろ、火村。止めてくれ!!」


アリスの哀願は聞き入れられず、むしろ先程より激しいキスの嵐が降り注ぐ。
火村は、自分が付けた紅い痕だらけの白い肌を見ながら、満足げに舌なめずりした。


「火村ぁ・・・もう・・・ヒック・・・止め・・・」


長い睫が涙に濡れ、愛らしい口から紡がれる言葉は震えている。





―――嗚呼、何て美しい。

これが俺が欲しかったモノだ。





吸い込まれるようにアリスの唇に食らいつくと、舌をアリスの咥内中に這わせる。
水音が頭の中を刺激し、火村を益々興奮させる。


「・・・っん・・・あっ・・・」


アリスが漏らす喘ぎ声も、今まで火村が抱いたどの女よりもいやらしくて、つい火村の心が踊る。


「やだ。火村やだ。」
「少し黙れ。」


不快な顔で見下すと、アリスは一瞬だけ大人しくなった。
だが、すぐにまた火村の下で抵抗する。


「いや、いやや。」
「大人しく犯された方が、身の為だと思うぜ。なあ、」





“アリス”。





耳元でそっと囁くと、アリスの顔が引きつる。


「何言って・・・やっ・・・あっ・・・」


下半身をズボン越しに揉まれ、無意識に声が出る。
女のような声に驚き、思わず下唇を噛み締めた。
アリスの上から低い笑い声がする。


「男になぶられて感じるんだ。」
「違っ「違わないだろ。」
「なっ・・・」


意地の悪い声に振り向くと、狂気染みた笑顔が見える。















「愛してるよ、アリス。」